船の形象物・航海灯・汽笛
このページは読み物です。航海の教材ではありません。 実際の航海には最新の法令と海図を使ってください。
昼の合図 ── 黒い形(形象物)
マストに掲げる黒い形を形象物(けいしょうぶつ)といいます。 遠くからでも、逆光でも読めるように、色ではなく形と数で意味を伝えます。 覚え方はかんたんで、球の数が増えるほど困りごとが重い ── 1個は「止まっています」、2個は「動けません」、3個は「乗り上げました」。
- 球形1個びょう泊中の船 ── いかりを下ろして止まっています(第30条第1項)
- 球形2個(縦)運転不自由船 ── 故障などで、他の船をよけられません(第27条第1項)
- 球形3個(縦)乗り揚げている船 ── 浅瀬などに乗り上げて動けません(第30条第3項)
- 球・ひし形・球(縦)操縦性能制限船 ── しゅんせつや潜水作業などで、思いどおりに動けません(第27条第2項)
- 円すい1個(頂点が下)帆を上げたまま機関でも進む船 ── 見た目は帆船でも、動力船として扱ってください(第25条第5項)
- 円すい2個を頂点で結合漁ろうに従事している船 ── 網などを使っていて、動きが制限されています(第26条)
- ひし形1個引っぱる距離が200mを超えるえい航の船と引かれる物件 ── 長いロープの列です。間を横切らないでください(第24条第1項)
- 円筒形1個喫水制限船 ── 水深ぎりぎりで、進路を変えられません(第28条)
夜の合図 ── ライトの色(航海灯)
夜は船の形が見えません。そこでどの向きに何色を見せるかを法律で決めて、見えた色の組み合わせから相手の向きが読めるようにしてあります。 紅は左げん・緑は右げん。緑だけが見えたら、あなたは相手の右側を見ています。
- マスト灯225度・前向き。正面から左右それぞれ112.5度まで(第21条第1項)
- げん灯(紅・左げん)112.5度・左げん側。正面から左へ112.5度まで(第21条第2項)
- げん灯(緑・右げん)112.5度・右げん側。正面から右へ112.5度まで(第21条第2項)
- 船尾灯135度・後ろ向き。真後ろから左右それぞれ67.5度まで(第21条第4項)
- 引き船灯135度・船尾灯と同じ向き・同じ範囲の黄色(第21条第5項)
- 全周灯360度・全方向(第21条第6項)
⭐ ここにきれいな足し算が隠れています。 マスト灯は225度、船尾灯は135度 ── 足すとちょうど360度で、 どの方向から見ても必ずどちらかが見えます。 そしてげん灯は112.5度ずつの一対で、2つ合わせるとマスト灯と同じ225度。 切れ目も重なりも無いように、角度が設計されています。
音の合図 ── 汽笛
霧や夜で形もライトも見えないとき、最後に残るのが音です。 短音は約1秒、長音は4秒以上6秒以下と、鳴らす長さまで法律に書いてあります(第32条)。 互いに見えている船が針路を変えるときは、こう鳴らします。
| 鳴らし方 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| ・ | 針路を右に転じています | 第34条第1項 |
| ・・ | 針路を左に転じています | 第34条第1項 |
| ・・・ | 機関を後進にかけています | 第34条第1項 |
・=短音(約1秒)。モールス符号と似ていますが、 こちらは文字ではなく動きそのものを伝える合図です。
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1問目 / 全5問
よくある質問
形象物とは何ですか?
船がマストに掲げる黒い形のことです。昼間の合図で、色ではなく形と数で意味を伝えるので、遠くからでも逆光でも読めます。球1個は「いかりを下ろして止まっています」、球2個は「他の船をよけられません」、球3個は「浅瀬などに乗り上げて動けません」。このページに並べた形はすべて海上衝突予防法の条文にある組み合わせで、各項目に条を添えてあります。
黒い球は、どうして昼間だけなのですか?
形象物は昼間の合図で、夜は同じ意味をライト(灯火)で伝えるからです。たとえばびょう泊中の船は、昼は球形の形象物1個、夜は白い全周灯を掲げます。海上衝突予防法は昼と夜の両方の伝え方を条文で決めていて、このページの形はすべてその条文にある組み合わせです。
げん灯の紅と緑は、どちらが左ですか?
紅が左、緑が右です。海上衝突予防法第21条第2項が、紅灯は左げん側・緑灯は右げん側と決めています。夜の海では船の形が見えないので、見えたライトの色で「相手のどちら側を見ているか」が分かります。緑だけが見えれば相手の右側を見ている、つまり相手は自分から見て左のほうへ進んでいます。
汽笛の長さに決まりはあるのですか?
あります。短音は約1秒、長音は4秒以上6秒以下と、海上衝突予防法第32条が秒数まで決めています。「短めに鳴らす」のようなあいまいな決め方ではなく、聞いた人が短音か長音かを迷わないように、時間そのものが法律に書いてあります。
このページを覚えれば船を操縦できますか?
できません。このページは記号の意味を紹介する読み物で、航海の教材ではありません。実際に船を動かすには小型船舶操縦士などの免許と、最新の法令・海図にもとづく学習が必要です。ここに載せた条文も、読みやすさのために要約しています。正確な条文はe-Gov法令検索の海上衝突予防法を確認してください。
船は、昼は黒い形・夜はライトの色・見えないときは音で、 「いま何をしているか」を周りに知らせています。 その決まりを海上衝突予防法の条文から確かめて並べました。
出典
角度・形・秒数はすべて 海上衝突予防法(昭和52年法律第62号・e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます) の条文で確かめたものです。各項目に条を添えてあります。 国際的には「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG)」に もとづいていて、世界中の船が同じ記号を使います ── 日本の船の黒い球も、外国の船の黒い球も、同じ意味です。
黒い形の大きさは、法律で決まっている
黒い球は、遠くの船から読める大きさでなければ役に立ちません。 そこで海上衝突予防法施行規則の第8条が、形ごとに寸法を決めています。 球形は直径0.6メートル以上。円すい形は底の直径が0.6メートル以上で、高さは底の直径と同じ。 円筒形は直径0.6メートル以上で、高さは直径の2倍。 ひし形は、同じ形の円すい2個を底で上下に結合させた形、と書かれています。 つまり、ひし形は平たい板ではなく立体です。
球・円すい・円筒・くっつけた円すいは、どれも縦の軸のまわりに回しても形が変わらない立体です。 船がどちらを向いていても、見る人には同じ形に見えます。 2個以上を縦に並べるときは、規則の第17条で1.5メートル以上あけると決まっています。 球そのものが0.6メートルなので、間はその2倍より広いことになります。
小さい船には例外があります。長さ20メートル未満の船は、その船の大きさに合った形象物でよいと第8条のただし書にあります。 また、長さ7メートル未満の船がいかりで止まるときは、狭い水道・びょう地(いかりを下ろす場所)やその近く、 ほかの船がふつう通る水域にいるときを除いて、球1個を掲げなくてよいと海上衝突予防法第30条第4項が決めています。
出どころ: 海上衝突予防法施行規則(昭和52年運輸省令第19号・e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)の第8条・第17条と、海上衝突予防法第30条第4項。
ライトは、何海里先から見えなければならないか
航海灯には「これだけ遠くから見えること」という決まりがあります。 海上衝突予防法第22条の表によると、長さ50メートル以上の船は、マスト灯が6海里、 げん灯・船尾灯・全周灯が3海里です。海里(かいり)は海で使う距離の単位です。 長さ12メートル未満の小さい船では、マスト灯が2海里、げん灯は1海里でよいとされています。 船が大きいほど、遠くから見えるライトが求められます。
「何海里先から見える」をライトの明るさに直すのが、施行規則の第3条です。 明るさ(光度)は計算式で決めていて、その式には大気の透過率として0.8という数が入っています。 光が空気を通るうちに弱まることを、あらかじめ式に入れているのです。
おもしろいのは、明るさに上限もあることです。同じ第3条は、光度は 「過度にまぶしくならないように制限されなければならない」とも書いていて、 その制限を、あとから調節できる方法で行ってはいけない、とも書かれています。 点ける時間も決まっていて、日没から日出までの間と、霧などで見えにくいときは昼間も点けます(第20条)。 その間は、法定のライトと間違えられるような別のライトを点けてはいけません。
出どころ: 海上衝突予防法(新しいタブで開きます)の第20条・第22条と、施行規則の第3条。
霧の中の音 ── 大きい船ほど低い声
霧で何も見えないとき、船は決まった間隔で音を出しつづけます。 海上衝突予防法第35条によると、動力船が水の上を進んでいるときは、2分をこえない間隔で長音を1回。 航行中でも水の上を進んでいないときは、約2秒あけた長音2回を、やはり2分をこえない間隔で鳴らします。 いかりで止まっている船は汽笛ではなく号鐘(ごうしょう・船の鐘)を、 1分をこえない間隔で約5秒間、急速に鳴らします。
音の道具は、船の大きさで増えます。第33条は、船に汽笛と号鐘を備えるよう求め、 長さ100メートル以上の船にはさらに「どら」を備えるよう求めています。 霧の中でいかりを下ろした100メートル以上の船は、前で号鐘を鳴らした直後に、後ろでどらを約5秒間鳴らします。 長さ12メートル未満の船は汽笛も号鐘も無くてよいとされていますが、 代わりに有効な音を出せる手段を用意しておくことが求められます。
汽笛の音の高さも、船の大きさで決まっています。施行規則第18条の表では、 長さ200メートル以上の船の汽笛は基本周波数が70ヘルツ以上200ヘルツ以下、 長さ20メートル未満の船は250ヘルツ以上700ヘルツ以下です。 ヘルツは1秒に何回ふるえるかの単位で、数が小さいほど低い音です。 つまり大きい船ほど低い声で鳴きます。 霧の中で低い汽笛が聞こえたら、大きな船が近くにいる合図です。
出どころ: 海上衝突予防法の第33条・第35条と、 海上衝突予防法施行規則(新しいタブで開きます)の第18条。
港の中の決まりと、助けを呼ぶ合図
港の中では、別の法律が上に重なります。海上衝突予防法第41条は、港則法や海上交通安全法に決まりがあることは そちらに従うとしています。港則法第27条は「港内においては、みだりに汽笛又はサイレンを吹き鳴らしてはならない」。 そして第29条には、特定港(大きな船や外国の船が出入りする港として政令で決められた港)にいる船で火災が起きたとき、 走っている場合を除いて、汽笛かサイレンで長音を5回鳴らして知らせる、と書かれています。 ここでいう長音は、海上衝突予防法と同じ長さの長音です。
本当に危ないときの合図も、法律で決まっています。海上衝突予防法第37条は、遭難して助けを求めるときは 省令で決めた信号を行うよう求め、施行規則第22条がその信号を並べています。 約1分おきに1回、大砲などを撃つ。モールス符号のSOS。無線で「メーデー」と言う。オレンジ色の煙。 そして、左右に伸ばした腕を繰り返しゆっくり上下させること。 道具が何も無くても、腕を広げてゆっくり上下に振れば、それが法律上の遭難信号になります。 この信号は助けを求めるとき以外に使ってはならず、まぎらわしい信号も禁じられています(第37条第2項)。
出どころ: 港則法(昭和23年法律第174号・e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)の第3条・第27条・第29条と、海上衝突予防法の第37条・第41条、施行規則の第22条。