顕微鏡の倍率の計算と、視野の広さ
接眼レンズに 10×/18 と書いてあれば、/18 が視野数です(JIS B 7252:2015 表4の表示方法)。
早見表 ── 接眼10倍・視野数18の接眼レンズのとき
対物レンズの倍率ごとに、総合倍率と実視野(mm・μm)をまとめました。
| 問い | 総合倍率 | 実視野(mm) | 実視野(μm) |
|---|---|---|---|
| 10倍で見えている幅は? | 10倍 | 18mm | 18,000μm |
| 20倍で見えている幅は? | 20倍 | 9mm | 9,000μm |
| 40倍で見えている幅は? | 40倍 | 4.5mm | 4,500μm |
| 100倍で見えている幅は? | 100倍 | 1.8mm | 1,800μm |
| 200倍で見えている幅は? | 200倍 | 0.9mm | 900μm |
| 400倍で見えている幅は? | 400倍 | 0.45mm | 450μm |
| 600倍で見えている幅は? | 600倍 | 0.3mm | 300μm |
| 1,000倍で見えている幅は? | 1,000倍 | 0.18mm | 180μm |
接眼レンズの倍率を上げても、実際に見えている幅(実視野)は変わりません。 変わるのは対物レンズの倍率と、接眼レンズの視野数(FN)だけです。 上の道具は、いまの組と1つ前の組を2つの円で並べて、 見える面積がどれだけ変わったかを見せます。
接眼レンズの「10×/18」の意味
接眼レンズの筒には、観察倍率と視野数が斜線で区切って書いてあります。 「10×」が接眼倍率、「/18」が視野数(FN)です。 視野数は、接眼レンズの中にある視野絞りという穴の直径を、mmで表した数字です。
JIS B 7252:2015(顕微鏡対物レンズ及び接眼レンズの表示方法)が、 この書き方を表4で定めています。
総合倍率は、接眼×対物のかけ算
顕微鏡で最終的に何倍に拡大されて見えるか(総合倍率)は、 接眼レンズの倍率と対物レンズの倍率を掛けるだけで求まります。 たとえば接眼10倍・対物40倍なら、総合倍率は400倍です。
実視野は、視野数(FN)÷対物倍率 ── 接眼倍率は関係ありません
実際に見えている試料(顕微鏡で観察している物)の幅(実視野)は、 接眼レンズの視野数を対物レンズの倍率で割って求めます。 この式に接眼倍率は出てきません。だから接眼レンズだけを10倍から20倍に替えても、 対物レンズと視野数が同じなら、見えている幅は変わりません。 単位はmmで、そのまま1000倍すればμmになります (mmとμmの書き方)。
「実視野=接眼レンズの視野数FN/対物レンズの倍率Mo」(本文の例文どおり単位はmm)。
「実視野」という言葉も、JISが決めている
顕微鏡をのぞいたときに見える丸い範囲を「視野」といいます。JIS Z 8120:2001(光学用語)という規格は、 視野を「光学機器で見ることができる物体空間の範囲」と決めたうえで、顕微鏡で見えている範囲だけを特別に「実視野」と呼ぶとしています。
ところが、この規格の全85ページの中で「実視野」ということばが出てくるのは、この1か所だけです。実視野を計算する式は、この規格には書かれていません。ことばの意味を決める規格と、 計算のしかたを教えてくれる資料は、別々になっています。
対物レンズにも、視野数の印がある
ここまでは接眼レンズの視野数(FN)の話でした。JIS B 7252:2015の表2によると、対物レンズの記号がPLANやPLのときは、対物レンズ側にも視野数の印が付いています。 「組み合わせる接眼レンズの視野数はここまで」という印で、「/OFN20」のように書かれます。
この数字は実視野の計算には使いません。それでも、接眼レンズと対物レンズという別々のレンズが、 「視野数」という同じものさしで設計をそろえていることが分かります。
接眼レンズには、ほかにも印が付くことがあります。JIS B 7252:2015の表5は、 メガネをかけたままのぞける接眼レンズには専用の記号を、十字の線が入った接眼レンズにも 別の記号を付けることを勧めています。数字だけでなく、記号にもいろいろな意味があるのです。
倍率を上げると、面積は何分の1になる?
対物レンズだけを替えたときは、見える面積の変わり方が総合倍率の2乗にきれいに一致します。 接眼10倍・対物10倍から対物40倍に替えると、総合倍率は4倍、 見える面積は16分の1です。これは長さの比を2乗すると面積の比になる、という図形の面積のページと同じ考え方です。
ところが接眼レンズだけを替えたときは、この関係が成り立ちません。総合倍率は上がっても、 対物レンズと視野数が同じなら実視野は変わらないので、面積も変わらないからです。 上の道具の「2つの円」を見比べると、どちらの替え方かで結果がまったく違うのが分かります。
出典
- 日本産業標準調査会(JISC)JIS検索(新しいタブで開きます)── JIS B 7252:2015「顕微鏡対物レンズ及び接眼レンズの表示方法」表4、 JIS Z 8120:2001「光学用語」02.03.36 視野数(規格番号・名称・版年のみ引用。 2026年9月18日に規格票で確認)
よくある質問
顕微鏡の総合倍率はどうやって計算しますか?
接眼レンズの倍率と対物レンズの倍率を掛け算します。接眼10倍・対物40倍なら、総合倍率は400倍です。
400倍で見ているとき、実際の幅は何mmですか?
接眼10倍・対物40倍(総合倍率400倍)で、視野数18の接眼レンズなら、実際に見えている幅(実視野)は0.45mmです。総合倍率だけでなく、接眼レンズの視野数も要ります。
顕微鏡の視野数(FN)とは何ですか?
接眼レンズの中にある視野絞りという穴の直径を、mmで表した数字です(JIS Z 8120:2001)。通常、接眼レンズ本体に数字が書いてあり、対物レンズの倍率で割ると、実際に見えている幅(実視野)が分かります。
倍率を上げると、見える範囲はどれだけ狭くなりますか?
対物レンズを10倍から40倍に上げると、総合倍率は4倍になりますが、見える面積は16分の1になります。上の道具では、2つの円の大きさの違いとして見えます。
接眼レンズを10倍から20倍に替えると、見える範囲は半分になりますか?
なりません。対物レンズと視野数が同じなら、接眼レンズの倍率を上げても実際に見える幅(実視野)は変わりません。総合倍率は2倍になっても、見える面積は変わりません。
接眼レンズの「10×/18」という表示は何ですか?
接眼レンズには、観察倍率と視野数を斜線で区切って表示します。「10×」が接眼倍率、「/18」が視野数(FN)です(JIS B 7252:2015 表4の表示方法)。
見えている長さをμmで出すには?
mmの値に1000を掛けます。上の道具は、実視野をmmとμmの両方で出します。たとえば視野数18・対物10倍なら1.8mm=1,800μmです。
接眼レンズの実物を手元に置いて測ってみたい人は、画面ものさしで実寸をあてることもできます。