調べて分かる道具箱

元素の原子量と分子量

引き方の例
原子番号
26
元素記号
Fe
名前
鉄iron
族
8族
周期
第4周期
原子量
55.845 ± 0.002分子量を出すときは値 55.845 と、標準不確かさ 0.001 2 を使います (不確かさの中に真の値が同じ確率であると考えるので、± のあとの数を √3 で割ります)。
化学式の例
分子量
46.068 45
標準不確かさ
± 0.001 26この幅は試料によって原子量そのものが変わるぶんです。
分子量の内わけ
元素個数原子量計算に使う値不確かさの寄与
C炭素212.010 600.001 15
H水素61.007 980.000 47
O酸素115.999 400.000 21

合わせ方は足し算ではなく、寄与の2乗を足してから平方根をとります(誤差の伝わり方の式)。 いちばん大きい寄与は炭素の 0.001 15です。

かっこ(Ca(OH)2)と、水和物の中点(CuSO4·5H2O)も読みます。下つき数字(H₂O)や全角で貼っても大丈夫です。

やってみる

1問目 / 全5問

原子番号18のアルゴンと、19のカリウム。原子量が大きいのはどっち?

よくある質問

原子量に単位が付かないのはなぜですか?

原子量は重さそのものではなく「比」だからです。1961年に「質量数12の炭素(炭素12)の質量を12ちょうどとしたときの相対質量」と決められました。つまり炭素12を物差しにして、その何倍の重さかを表した数です。比なので単位が付きません。分子量も原子量を足した数なので、同じく単位が付きません。

原子量が1つの数ではなく範囲で書かれている元素があるのはなぜですか?

その元素の同位体の割合が、試料によって大きく変わるからです。原子量は同位体の平均の重さなので、割合が変われば原子量も変わります。日本化学会の原子量表(2026)では、水素・リチウム・ホウ素・炭素・窒素・酸素・マグネシウム・ケイ素・硫黄・塩素・アルゴン・臭素・タリウム・鉛の14元素が範囲で示されています。範囲は「知られているすべての試料の原子量が入るように」決められています。

分子量に付いている「標準不確かさ」は、測り方の誤差ですか?

違います。測定の腕前の話ではなく、原子量そのものが試料によって変わるぶんです。原典は、由来の分からない試料では範囲の中に真の値が同じ確率であるとみなす(長方形分布)と決めていて、範囲[a, b]なら値は(a+b)÷2、標準不確かさは(b−a)÷(2×√3)になります。分子量にまとめるときは、寄与の2乗を足してから平方根をとります。エタノールなら46.06845±0.00126で、この不確かさの8割以上が炭素の寄与です。

テクネチウムの原子量が空欄なのはなぜですか?

安定同位体がなく、天然で決まった同位体の割合を示さないからです。原子量は同位体の割合から決まるので、割合が決まらない元素には原子量を与えられません。原子量表で空欄なのは34元素あります。安定同位体を持たない元素は38ありますが、ビスマス・トリウム・プロトアクチニウム・ウランの4元素だけは地球上で決まった同位体の割合を示すので、例外的に原子量が与えられています。

原子番号の順と原子量の順が食い違うところがあるのはなぜですか?

原子番号は陽子の数、原子量は同位体の平均の重さで、決まり方が別だからです。重い同位体ばかりの元素は、陽子が1つ少なくても平均では重くなります。アルゴン(18番)とカリウム(19番)がその例で、アルゴンは99.60%が重いアルゴン40、カリウムは93.26%が軽いカリウム39です。安定同位体を持つ元素どうしでは、こことコバルトとニッケル、テルルとヨウ素の3か所で入れかわります。

分子量と式量はどう違うのですか?

計算のしかたは同じで、呼び名が違うだけです。水や二酸化炭素のように分子の形がはっきりしている物質では分子量と呼びます。食塩のように、ナトリウムと塩素が延々と並んでいて「1個の分子」を切り出せない物質では式量と呼びます。どちらも化学式に出てくる原子量を、個数ぶん足した数です。この道具はどちらも同じように計算します。

原子番号でも、元素記号でも、「てつ」でも iron でも引けます。 化学式を入れると分子量と標準不確かさまで出します。

原子量が1つの数に決まらない元素が、14あります

このページでいちばん見てほしいのがここです。原子量表を開くと、14の元素だけ値が1つではなく「範囲」で書かれています。 測り方が下手なのではありません。測る石によって、原子量そのものが変わるのです。

原子量は同位体の平均の重さです。同じ元素でも、重い同位体が多い試料と 少ない試料があります。地球のいろいろな場所で起きてきたことの結果なので、どこから採ってきたかで割合が違うわけです。 だから「この元素の原子量はこの数」と1つに決められません。

原子量が変動範囲で示されている14元素
元素原子量の変動範囲幅
水素1番・H[1.007 84, 1.008 11]0.00027
リチウム3番・Li[6.938, 6.997]0.059
ホウ素5番・B[10.806, 10.821]0.015
炭素6番・C[12.009 6, 12.011 6]0.002
窒素7番・N[14.006 43, 14.007 28]0.00085
酸素8番・O[15.999 03, 15.999 77]0.00074
マグネシウム12番・Mg[24.304, 24.307]0.003
ケイ素14番・Si[28.084, 28.086]0.002
硫黄16番・S[32.059, 32.076]0.017
塩素17番・Cl[35.446, 35.457]0.011
アルゴン18番・Ar[39.792, 39.963]0.171
臭素35番・Br[79.901, 79.907]0.006
タリウム81番・Tl[204.382, 204.385]0.003
鉛82番・Pb[206.14, 207.94]1.8

鉛の幅だけ、けたはずれです

表の左に帯を付けた行を見てください。鉛だけ幅が 1.8 もあります。 2番目に広いアルゴンが 0.171 なので、10倍以上。 範囲を持つ残り13元素の幅を全部足しても 0.291 にしかならず、 鉛ひとつがその6倍以上を占めています。

変動範囲の幅くらべ鉛(Pb)1.8アルゴン(Ar)0.171リチウム(Li)0.059
変動範囲の幅が広い3元素。棒はどれも同じ物差しで、いちばん広い鉛が目盛りいっぱいです。 残り11元素はもっと細く、いちばん狭い水素は0.00027で、 鉛の6700分の1ほどしかありません。 14元素ぶんの数は、すべて上の表にあります。

なぜ鉛だけこうなるのか。鉛の同位体は、ウランやトリウムが壊れてできるからです。ウランが崩れると鉛206に、トリウムが崩れると鉛208になります。 だからその石にウランやトリウムがどれだけ入っていたかで、 鉛206と鉛208の割合が変わります。何十億年ぶんの差がそのまま出るので、幅が広くなるわけです。

ここで気をつけることがあります。原典は「変動範囲の中間点を原子量の値、変動幅の半分を不確かさとして表記しないこと」と、はっきり禁じています。範囲は範囲のまま読むものです。 このページが元素のカードで範囲のほうを先に出しているのはそのためで、 計算に使う値は「分子量を出すときに使う数」として別に書いています。

原子番号の順と原子量の順は、3か所で入れかわります

周期表は原子番号(陽子の数)の順に並んでいます。原子量の順ではありません。 ふだんは両方の順番がそろっているのですが、3か所だけ、あとの元素のほうが軽くなります。

原子番号順と原子量順が入れかわる3か所
元素原子番号原子量
アルゴン次より重い18[39.792, 39.963]
カリウム前より軽い1939.098 3 ± 0.000 1
コバルト次より重い2758.933 194 ± 0.000 003
ニッケル前より軽い2858.693 4 ± 0.000 4
テルル次より重い52127.60 ± 0.03
ヨウ素前より軽い53126.904 47 ± 0.000 03

いちばん分かりやすいのがアルゴンとカリウムです。アルゴンは99.60%が重いアルゴン40なのに対して、カリウムは93.26%が軽いカリウム39。原子量は同位体の平均なので、陽子が1つ少ないアルゴンのほうが重くなるわけです。 しかもアルゴンは範囲のいちばん軽いところでもカリウムより重いので、 どの試料で測っても逆転は消えません。

「3か所」は安定同位体を持つ元素どうしで数えたときの数です。 原子量が与えられている元素をすべて含めると、トリウム(90番・232.0377)とプロトアクチニウム(91番・231.035 88)がもう1組あって4か所になります。どちらも安定同位体を持たないのに原子量がある、 例外の4元素どうしの組です。

113番のニホニウムは、アジアで初めて見つかった元素です

名前を決めた国際純正・応用化学連合(IUPAC)の発表に、こう書かれています。「Element 113 is the first element to have been discovered in an Asian country.」── 113番は、アジアの国で発見された最初の元素です。

同じ発表には、もう1つ書かれていることがあります。森田浩介さんたちの提案は、1908年に小川正孝が43番元素の発見をめぐって行った先駆的な仕事への敬意を 示すものだ、という一文です。小川はその元素を、日本にちなんで「ニッポニウム」と名づけました。のちに43番元素は安定同位体を持たないことが分かり、ニッポニウムは周期表から消えます。およそ100年後に、日本の名前が周期表に戻ってきたわけです。

見つけるまでの道のりも、ちょっとすごいことになっています。理化学研究所の記録によれば、 実験を始めたのが2003年9月、1つ目が見つかったのが2004年7月23日、2つ目が2005年4月2日。 ここから2006年・2007年・2008年・2009年…と、7年以上ひとつも出ませんでした。 3つ目が見つかったのは2012年8月12日です。

なぜ3つ目を待ったのか。1つ目と2つ目は4回のα崩壊のあと核分裂してしまい、 それだけでは決め手になりませんでした。3つ目は核分裂せずに6回のα崩壊を続け、4回目・5回目・6回目のエネルギーが すでに知られているボーリウム266・ドブニウム262・ローレンシウム258のものとぴったり一致したのです。そこで疑いの余地がなくなりました。

原子量が「—」の元素が、34あります

原子量表をよく見ると、原子量の欄が空っぽの元素があります。 テクネチウム(43番)、プロメチウム(61番)、そして93番のネプツニウム以降ぜんぶ。 数えると34元素です。

理由はここまでの話とつながっています。原子量は同位体の割合から決まる数でした。ところがこれらの元素は安定同位体を持たず、天然で決まった割合を示しません。 割合が決まらないので、平均も決まらない ── だから原子量を与えられないのです。

安定同位体を持たない元素は38あります。そのうちビスマス・トリウム・プロトアクチニウム・ウランの4つだけは、 地球上で決まった同位体の割合を示すので、例外として原子量が与えられています。 38引く4で34、というわけです。

「4桁の原子量表」には、これらの元素にも括弧つきの数(テクネチウムなら99)が載っています。 ただしこれは放射性同位体の質量数の一例であって、原典自身が「その値を原子量として扱うことは出来ない」と書いています。 だからこのページでは、そういう元素が化学式に出てきたら分子量を出しません。 黙って0として足すと「重さがゼロの元素」を計算に混ぜたことになり、 しかも画面のどこにもそう出ません。

数値の出どころ: 118元素の原子番号・記号・日本語名・英語名・原子量と、 分子量の計算手順(長方形分布・誤差伝播)は日本化学会 原子量専門委員会「原子量表(2026)」(新しいタブで開きます)から。同位体の割合は同じ資料の「元素の同位体組成表(2026)」から。表そのものは転載できないので、このページの表はすべて作り直しています。 日本語名も原典の表記に合わせました(プラセオジム・ネオジム・カリホルニウム)。 ニホニウムの引用はIUPAC の発表(新しいタブで開きます)、実験の日付は理化学研究所 仁科加速器科学研究センターの記録(新しいタブで開きます)から取りました(発見した側の記録を採っています)。 3族に何が入るかが決まっていないことはIUPAC の周期表のページ(新しいタブで開きます)に書かれています。

1か所だけ、原典の印字と食い違ったところがあります。原典のエタノールの計算例は、酸素の標準不確かさを 0.000 22 と印字しています。 しかし原典自身の式に原典自身の範囲を入れると 0.000 21 になります。 どちらが正しいかは原典が同じ表に書いている合計(0.001 26)で検算できて、 0.000 21 なら 0.001 26、0.000 22 なら 0.001 27 になります。 そこで計算どおりの 0.000 21 を採りました。この検算そのものを検査に入れてあります。