トマトの積算温度と収穫の目安
既定の 1100℃ は「開花から収穫開始まで」で、品種はハウス桃太郎のものです。品種・作型・地域で変わるので、 自分の値が分かるなら入れ替えてください。
- 収穫の目安花が咲いた日から数えて
- 2026年11月23日ごろ
- 計算積算温度 ÷ 日平均気温 = 日数
- 1100℃ ÷ 20℃ = 55日
気温が毎日ちょうどこの値だとしたときの目安です。実際の気温は日ごとに変わるので、 暑い日が続けば早まり、涼しければ遅れます。積算温度は、毎日の気温を足していく計算です── 寒い日があっても、その日のぶんは足されます(進みが遅くなるだけです)。
よくある質問
トマトの積算温度とは?
毎日の平均気温を足していった合計です。作物の育ち方は「何日たったか」より「どれだけの温度を浴びたか」でよく説明できるため、日数の代わりに使われます。暑い日が続けば早く貯まり、涼しければゆっくり貯まるので、同じ品種でも夏と秋で収穫までの日数が変わることを説明できます。
トマトが赤くなる(収穫できる)積算温度は何度?
開花から収穫開始までが1100℃です。愛知県「トマトの栽培管理・環境制御指針」の表の値で、品種はハウス桃太郎、日平均気温をそのまま足す数え方(基準0℃)です。日平均20℃なら55日にあたります。収穫が始まってから同じ花房の収穫が終わるまでは、さらに420℃(1つの花房に4果のとき)です。品種や作型で値は変わるので、この道具は目標の値を入れ替えられます。
トマトの積算温度の計算方法は?
花が咲いた日から、毎日の日平均気温をそのまま足していきます(基準0℃)。合計が1100℃に届いた日が収穫開始の目安です。日平均20℃の日が続くなら 1100÷20=55日。作物によっては「10℃を超えたぶんだけ足す」有効積算温度を使うこともあり、同じ1100℃でも意味が変わってしまいます。ここで基準0℃だと分かるのは、出典の表が「日平均20℃なら55日」と併記していて、1100÷20=55 とぴたりと合うからです。10℃を引く数え方なら日数が合いません。
1100℃という数字はどこから来ていますか?
愛知県の「トマトの栽培管理・環境制御指針」にある表から取りました。同表は「SHP関東地域農業研究・普及協議会『低段・多段組合せ栽培によるトマトの周年多収生産技術マニュアル、2010』より作成」と出どころを明記しています。品種はハウス桃太郎です。
品種が違っても使えますか?
そのままでは合いません。1000℃や1200℃と書いている資料もあり、品種・作型・地域で変わります。この道具は目標の積算温度を入れ替えられるようにしてあるので、自分の品種の値が分かるならそれを入れてください。分からない場合は、実際に1回育てて、開花から収穫までの日平均気温を足せば自分の畑での値が出ます。
寒い日があると積算温度は減りますか?
減りません。積算温度は足し算だけです。寒い日はその日に足される量が小さくなるだけで、貯まった量が戻ることはありません。ただし霜が降りるような低温では株そのものが傷むので、その場合は積算温度の話とは別に対処が必要です。
花が咲いた日と気温を入れると、収穫できるまでの日数の目安が出ます。
同じ「1100℃」でも、数え方が2つあります
積算温度には2つの数え方があります。
- 日平均気温をそのまま足す(基準0℃)。20℃の日は20を足す
- ある温度を超えたぶんだけ足す(有効積算温度)。 基準10℃なら、20℃の日は10しか足さない
どちらで数えるかで、同じ1100℃でもかかる日数が倍ちがいます。 ところが「トマトの積算温度は1100℃」とだけ書いてあるページが多く、どちらの数え方なのかが書かれていません。 これでは使えません。
このページが基準0℃だと言い切れるのは、出典の表に「日平均20℃のときの所要日数」が併記されているからです。 1100 ÷ 20 = 55 で表の55日と一致し、210 ÷ 20 = 10.5、420 ÷ 20 = 21 も 表のとおりになります。10℃を引く数え方なら、どれも合いません。
出典の表
| 区間 | 必要な積算温度 |
|---|---|
| 開花 → 次の花房の開花花房は下から順に付く。この間隔で段が増えていく | 210℃日平均20℃なら 10.5日 |
| 開花 → 収穫開始いちばんよく使う値。花が咲いた日から数える | 1100℃日平均20℃なら 55日 |
| 収穫開始 → 同じ花房の収穫終了1つの花房に4果ついている場合 | 420℃日平均20℃なら 21日 |
出典: 愛知県「トマトの栽培管理・環境制御指針」表Ⅰ−1。 同表は「SHP関東地域農業研究・普及協議会『低段・多段組合せ栽培によるトマトの 周年多収生産技術マニュアル、2010』より作成」と記しています。 収穫終了までの420℃は、1つの花房に4果ついている場合の値です。
地域の平年気温は、載せるのをやめました
「◯月ならだいたい何度」という表を載せることもできますが、やめました。 気温は地点ごとに大きく違ううえ、ハウスの中は外気とかなり違うためです。 外の平年値を当てはめると、ハウス栽培では大きく外れます。
気温は自分のところの値を入れてください。 温度計の記録があるなら、その平均がいちばん確かです。
赤くなるのは、赤い色のもとが作られるから
トマトが赤く見えるのは、実の中で「リコピン」という赤い色のもとが作られるからです。
リコピンは、実が熟すころに一気に増えます。栃木県のガイドは、このリコピンが作られる温度を12〜32℃とし、 その範囲を超えると生成が抑制されると書いています。赤くなるには、ちょうどよい温度の幅があります。 暑い日が続くと、赤い色のもとは作られにくくなります。
色がうまく出なかった実を、農研機構が部位ごとに切り分けて測っています。赤くならなかった部分は、 赤いリコピンが少なく、かわりに橙色の「βカロテン」と黄色い「ルテイン」が多くなっていました。 栃木県のガイドによると、βカロテンはリコピンより作られる温度の幅が広いので、赤が止まっても黄色は作られ続けます。 黄色っぽい実になるのは、そのためです。
おもしろいのはここからです。この黄色い部分から、緑の色のもとである葉緑素は、まったく見つかりませんでした。 黄緑に見えるところでも、中では緑がすでに抜けています。残っているのは、橙色と黄色の色のもとだけです。
出どころ: 栃木県「栃木県農作物生産における気候変動適応ガイド」トマト編(新しいタブで開きます)(栃木県農政部経営技術課)46ページと、鈴木克己ほか「トマト果実着色不良の発生要因と対策方法に関する研究」(野菜茶業研究所研究報告 12:81〜88、2013)(新しいタブで開きます)。
日なたの実は、まわりの空気より熱くなります
同じハウスの中でも、日が当たる実とかげになる実では、温度が違います。
農研機構は、熱を色で写すカメラで実の表面温度を測りました。晴れた日の11時ごろ、直射日光が当たっている実の表面は35℃ほど。 アルミホイルでおおった部分より、4℃ほど高い温度でした。リコピンが作られにくくなる32℃を、日なたの実は超えていたことになります。
同じ写真の中で、もっと意外なのは葉です。日が当たっている葉の表面は、かげになった実よりも、さらに2℃ほど低い温度でした。 日なたの葉のほうが、日かげの実より冷たいのです。
栃木県のガイドは、その理由を「果実には気孔がなく冷却能力がない」と説明しています。気孔は、葉にある小さな穴です。 トマトの実には気孔がないため、直射光に当たると熱がたまります。だから農研機構の報告も、日ざしが強い時期は、 実がなるべく葉のかげに入るように枝を整えるのが有効だと思われる、と書いています。
栃木県のガイドは、実の皮の組織は40℃以上の高温で壊死して白く変色すると書いています。そして、緑色の果実は赤色よりも高温に弱いので、 大きくなりきったあと色づく前の実が日焼け果になりやすい、と説明しています。赤くなる前が、いちばん弱い時期です。
出どころ: 鈴木克己ほか「トマト果実着色不良の発生要因と対策方法に関する研究」(野菜茶業研究所研究報告 12:81〜88、2013)(新しいタブで開きます)と、栃木県「栃木県農作物生産における気候変動適応ガイド」トマト編(新しいタブで開きます)46ページ。
アルミホイルの切り込みの形が、そのまま実に残りました
日ざしが色を決めていることを、目に見える形で示した実験があります。
農研機構は、育ち途中の実をアルミホイルでおおい、一部だけ切り込みを入れて、そこに日光が当たるようにしました。 そのまま熟すのを待つと、切り込みと同じ形をした色の悪い部分が、実の上に現れました。日が当たったところだけ、色が変わったのです。
色の悪くなった面積は、切り込みの面積より広くなりました。ホイルでおおった側にも、色の悪い部分は出ています。 報告は、光や温度などさまざまな環境の要因が影響したと思われる、と書いています。
この研究のまとめには、直射日光による高温は有色体の発達を阻害し、リコペン含量を低下させ、着色不良を引き起こすと考えられた、とあります。 有色体は、実の細胞の中で色のもとをためている小さな入れ物です。日ざしと温度は、色のもとの量だけでなく、その入れ物の育ち方まで変えていました。
出どころ: 鈴木克己ほか「トマト果実着色不良の発生要因と対策方法に関する研究」(野菜茶業研究所研究報告 12:81〜88、2013)(新しいタブで開きます)。
花が実になるかどうかも、温度で決まります
積算温度を数えはじめるのは、花が咲いた日です。その花が実になるかどうかにも、温度が関わります。
栃木県のガイドは、トマトの生育適温を13〜25℃とし、30℃以上の高温に遭遇すると花芽の形成や生育に障害が発生する、と書いています。 花が落ちて実がつかないことを着果不良といい、日中35℃以上の高温にあったときや、日平均気温が28℃を超えたときに、はっきり現れます。
理由のひとつは、花粉の力が落ちることです。ガイドは、35℃以上という温度の高さだけでなく、その温度に何時間あうかが大事だと書いています。 日中の高温の時間を短くし、朝夕や夜間に低い温度にあわせることで、花粉の発芽率への影響を回避できることが知られている、とあります。
ここから分かるのは、日平均気温が同じ日でも、昼にどこまで上がったかで花のつき方が変わる、ということです。 1日の平均を足していく数え方は、収穫の目安をつかむのに向いています。昼の最高気温と夜の最低気温は、それとは別に見ておくと、 実のつき方まで見当がつきます。
出どころ: 栃木県「栃木県農作物生産における気候変動適応ガイド」トマト編(新しいタブで開きます)44ページ。