ローマ字変換
| 式 | ローマ字 |
|---|---|
| ヘボン式駅名や道路標識。英語の発音に寄せた綴り | satou hanako |
| 訓令式内閣告示の第1表。五十音の並びをそのまま写す | satou hanako |
| パスポート式外務省の書き方。長音を書かず、すべて大文字 | SATO HANAKO |
よくある質問
パスポートで「づ」はどう書きますか?
ZU です。外務省のヘボン式ローマ字綴方表では「ヅ」も「ズ」も ZU です。たとえば「つづき」は TSUZUKI、「みずの」は MIZUNO です。学校で習う訓令式では「づ」を du と書きますが、パスポートは ZU に決まっています。
ヘボン式とは何ですか?
英語の発音に寄せたローマ字の書き方です。「し」を shi、「ち」を chi、「つ」を tsu、「ふ」を fu と書きます。幕末に来日した医師ヘボンの和英辞書で使われた綴りが名前の由来で、駅名の標識や道路標識、パスポートの氏名はこの系統です。訓令式(si・ti・tu・hu)とは、この4つの行の子音の書き方が違います。
「日本」をローマ字で書くとどうなりますか?
読みで決まります。「にほん」なら NIHON、「にっぽん」なら NIPPON です。この2つは、ヘボン式・訓令式・パスポート式のどれで書いても同じ綴りになります。
駅名のローマ字はどの式ですか?
ヘボン式です。観光庁の「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」(平成26年3月)は、駅名表示を含む案内について、表音の英語表記は常にヘボン式ローマ字を用いるとしています。「ん」は B・M・P の前で M、つまる音は次の子音を重ねる、という書き方もパスポートと同じです。
「し」は shi と si のどちらが正しいですか?
どちらも正しく、式が違います。ヘボン式ではshi、訓令式ではsiです。駅名の標識や道路標識はヘボン式、学校でローマ字を習うときは訓令式が基本です。パスポートはヘボン式をもとにした外務省の書き方です。
パスポートの名前で「さとう」はどう書きますか?
SATOです。パスポートのヘボン式では長音(伸ばす音)を書かないので、SATOUやSATOHにはなりません。ただし「オウ」「オオ」の音に限り、申請時に希望すればSATOHのようにHを付けた表記も認められます。
なぜ「なんば」がNAMBAになるのですか?
ヘボン式では、「ん」の次にB・M・Pの音が来るとMで書くためです。難波はNAMBA、本間はHOMMA、心配はSHIMPAIになります。実際に発音すると唇が閉じてm の音になるので、それをそのまま綴りにしています。
「はっちょう」はどう書きますか?
HATCHOです。促音(っ)は次の子音を重ねるのが原則ですが、CHの前だけはTになります。CCHOではなくTCHOです。八丁堀はHATCHOBORIと書きます。
訓令式はどこで使うのですか?
小学校のローマ字の学習や、日本語の音の並びを示す場面です。昭和29年の内閣告示で第1表とされていた書き方で(2025年12月の新しい告示では表が1つになり、ヘボン式に基づく綴りになりました)、五十音の行と段がそのまま綴りに現れるので規則が単純です。国際規格のISO 3602もこの方式です。
ヘボン式・訓令式・パスポート式を同時に出します。しが shi か si かで迷いません。
ローマ字は1つではありません
「し」を shi と書くか si と書くか。どちらも正しい綴りで、 別の方式に属しています。
ヘボン式は、英語の発音に寄せた綴りです。 shi・chi・tsu・fu のように、英語を話す人が読んだときに近い音になるよう作られています。 駅名の標識や道路標識、パスポートはこの系統です。 幕末に来日したヘボンという医師の辞書で使われたことから、この名前が付いています。
訓令式は、日本語の五十音の並びをそのまま写した綴りです。 さ行なら sa・si・su・se・so と、行の子音が変わりません。 規則が単純です。 国際規格のISO 3602もこの方式です。
どちらが優れているというものではなく、目的が違います。 英語話者に読ませたいならヘボン式、日本語の音の構造を示したいなら訓令式です。
パスポートは長音を書きません
パスポートの名前の書き方は、外務省が定めたヘボン式です。 いちばん大きな特徴は、伸ばす音を書かないことです。
佐藤(さとう)は SATO、伊藤(いとう)は ITO、大野(おおの)は ONO になります。 SATOU や SATOH ではありません。 ただし「オウ」「オオ」の音に限っては、申請するときに希望すれば SATOH のように H を付けた表記も認められています。 いったん決めた表記は原則として変えられないので、 家族で揃えたい場合などは最初の申請時に決めておく必要があります。
「ん」がMに変わるとき
難波は NAMBA、本間は HOMMA、心配は SHIMPAI。 ヘボン式では、「ん」の次にB・M・Pの音が来るとMで書きます。
理由は発音にあります。「なんば」と声に出すと、 「ん」のところで唇が閉じているのが分かります。 続くbの音に備えて口の形が先に変わるためで、 このとき実際に出ている音はnではなくmです。 英語の発音に寄せる方式なので、聞こえたとおりに綴っているわけです。
訓令式では、この置き換えをしません。日本語の音としては同じ「ん」なので、 つづりも n のままにします。ここにも方式の考え方の違いが表れています。
小さい「っ」の扱い
促音の「っ」は、次の子音を重ねて書きます。 札幌は SAPPORO、切符は KIPPU です。
ただし1つだけ例外があります。CHの前ではTになります。 八丁(はっちょう)は CCHO ではなく TCHO、 八丁堀は HATCHOBORI です。 ch という2文字で1つの音を表しているため、 cを重ねると別の読み方になってしまうからです。
国の決まりは、2025年12月22日に71年ぶりに新しくなりました
ローマ字をどう書くかの国の決まりは、「ローマ字のつづり方」という内閣告示です。 内閣告示は、政府が決めたことを広く国民に知らせるために出す文書です。 昭和29年(1954年)12月9日の内閣告示第1号がその決まりで、 訓令式を第1表、ヘボン式などを第2表として載せていました。
これが令和7年(2025年)12月22日、内閣告示第4号として新しく定められました。告示には「昭和二十九年内閣告示第一号は、廃止する」 と書かれています。1954年から数えて71年ぶりの改定です。
変えた理由は、文化審議会の答申(令和7年8月20日)の概要に書かれています。 第1表の訓令式は「一般の社会生活において十分に定着してこなかった」。 一方で、ヘボン式が「実際には広く用いられてきた」。 そこで 「実際に社会で広く使用されているヘボン式に基づくつづり方を採用し、表を一つとする」 ことにしたのです。令和6年5月に文部科学大臣が文化審議会に諮問(意見を求めること)し、 同年6月から10回のローマ字小委員会を重ねて、答申(審議会の答え)にいたりました。
ところで「訓令式」という名前の由来も、答申に書かれています。 昭和12年(1937年)の内閣訓令第3号「国語ノローマ字綴方統一ノ件」で示されたつづりだから、 「訓令式」と呼ばれてきたのだそうです。訓令は、政府が国の役所に向けて出す指示です。 ヘボン式が人の名前から来ているのに対して、訓令式は文書の種類の名前です。
出どころ: 文化庁「ローマ字のつづり方(令和7年12月22日内閣告示第4号)」(新しいタブで開きます)、 文化審議会「改定ローマ字のつづり方(答申)」の概要(新しいタブで開きます)、 同(答申の本文)(新しいタブで開きます)。
新しい表は、パスポートの綴りと3か所で違います
新しい「ローマ字のつづり方」は、1つの「本表」と、使い方を書いた「添え書き」でできています。 本表は shi・chi・tsu・fu・ji のヘボン式のつづりで、「ぢ」と「づ」は ji と zu、「を」は o と書きます。現代では別の仮名と同じ発音になっているので、本表では「使い分けをしない」 と書かれています。
ただし、パスポートの書き方と違う点が3つあります。 1つめ、はねる音「ん」はどの音の前でも nです。添え書きの例は「乾杯 kanpai」「新聞 shinbun」です。 2つめ、つまる音「っ」は「子音字が2文字の場合は最初の字(sh の s、ch の c 等)を重ねる」ので、日直は nicchoku、抹茶は maccha です。 3つめ、長音は母音字の上に 「¯」の符号を付けるか、母音字を並べて書きます。 並べるときは現代仮名遣いと同じにするので、東北は Tōhoku か Touhoku です。
母音字を並べる書き方を勧める理由が、答申の概要に書かれています。 長音の符号を省くと、「オノ ユキ」も「オオノ ユウキ」も Ono Yuki になって区別がつきません。 日本語では音の長さで別の言葉になることがあるので、必要なときは Oono Yuuki のように母音字を並べて長さを示します。
すぐに変えなくてよいものも決めてあります。 添え書きの8は、混乱を防ぐため、各分野で使われてきた表記はすぐに変えなくてよいとして、 judo(柔道)、Tokyo(東京)、matcha(抹茶)を例に挙げています。9は、人の姓名や団体名を書くときは「当事者の意思を尊重する」 としています。パソコンの「ローマ字入力」も、答申は 「改定するローマ字のつづり方とは別のもの」と位置づけていて、「し」を s・i と打つ入力はこれまでどおりです。
小学3年生で習い、キーボードの入り口になります
小学校でローマ字を習うのは3年生です。 文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)の国語には、第3学年で 「日常使われている簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読み、ローマ字で書くこと」 と書かれています。学習指導要領は、学校で教える内容を国が定めたものです。
同じ学習指導要領は、3年生のローマ字の指導について、総合的な学習の時間で 「コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得」 することと「関連が図られるようにすること」と求めています。 ローマ字は、キーボードで日本語を打つための入り口としても学ぶ、というわけです。
出どころ: 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」(新しいタブで開きます)(国語)。
地図の「荒川」は Arakawa River、「利根川」は Tone River
国土地理院の地図や地名集では、地名のローマ字はヘボン式です。 国土地理院時報(2005年・108集)の要旨によれば、昭和59年から訓令式を採用してきたものの、 道路標識や駅名のローマ字がヘボン式に統一されてきたことを受けて、 ヘボン式に変え、長音の記号を省くことを原則にしました。
英語の地名の書き方は、国土地理院の 「外国人にわかりやすい地図表現検討会」の報告書(平成27年9月)が決めています。 方式は2つ。ローマ字の読みをそのまま残して Mt. や River を足す追加方式(筑波山なら Mt. Tsukubasan)と、 「山」「川」の部分を英語に置き換える置換方式(Mt. Tsukuba)です。
どちらにするかの決め手の1つが、固有名詞の部分の音の数(音拍)です。 1音拍なら追加方式で、恵山(えさん)は Mt. Esan。 3音拍以上なら原則置換方式で、雲取山(くもとりやま)は Mt. Kumotori。 2音拍で漢字1文字なら原則追加方式なので、荒川は Arakawa River、立山は Mt. Tateyama。 2音拍で漢字2文字の川は原則置換方式なので、利根川は Tone River になります。 富士山は「富士」だけで山を指すため、置換方式の Mt. Fuji です。 音の数が少ないと、山や川の部分まで含めて1つのまとまりに聞こえる、 というのが報告書の理由です。
出どころ: 国土地理院「外国人にわかりやすい地図表現検討会報告書」(平成27年9月)(新しいタブで開きます)、 国土地理院時報108集「地名のローマ字表記(要旨)」(新しいタブで開きます)。