調べて分かる道具箱

早口言葉の口の動き

論文 表1(110人が5段階で評価した7つ)
国立国語研究所 ことば研究館の記事
論文 2.1(音素の書き方まで印刷されている語)

漢字は読めません。読みを機械で当てるには辞書が要り、このサイトは全部のページをサーバー無しで 配っているので積めません。漢字が混ざったら、その字を1字ずつ指して読みを聞きます。 長い文は60拍まで見て、残りは切り捨てずに数を出します。

拍(はく)の数11拍
字の数ひらがなに直してから数えた文字数
15字
拍の数「きょ」も「っ」も「ん」も1拍
11拍
音素の数拍をさらに割ったもの
23音素
拍ごとに、口のどこを使っているか
口のどこ
前唇・歯または歯茎・前母音
中舌先
奥軟口蓋・奥舌・声門・後母音
と1拍目・直音
/t/前・歯/o/奥・後母
う2拍目・長音
/o/奥・後母
きょ3拍目・拗音往復 奥 → 前 → 奥
/k/奥・軟/j/前・前母/i/ の位置/j/奥・後母/o/ の位置/o/奥・後母
う4拍目・長音
/o/奥・後母
と5拍目・直音
/t/前・歯/o/奥・後母
っ6拍目・促音
/Q/奥・軟/k/ の位置
きょ7拍目・拗音往復 奥 → 前 → 奥
/k/奥・軟/j/前・前母/i/ の位置/j/奥・後母/o/ の位置/o/奥・後母
きょ8拍目・拗音往復 奥 → 前 → 奥
/k/奥・軟/j/前・前母/i/ の位置/j/奥・後母/o/ の位置/o/奥・後母
か9拍目・直音
/k/奥・軟/a/奥・後母
きょ10拍目・拗音往復 奥 → 前 → 奥
/k/奥・軟/j/前・前母/i/ の位置/j/奥・後母/o/ の位置/o/奥・後母
く11拍目・直音
/k/奥・軟/u/奥・後母

論文はこの3つを 前=「前」/中=「中」/奥=「後」 と書いています。この道具は子どもにも分かるように言い換えただけで、中身は同じです。

  • 促音/Q/は、次に続く音素の調音位置とする
  • 半母音/j/ は、/i/→後続母音と調音位置が移動するものとする
  • 半母音/w/ は、/u/→後続母音と調音位置が移動するものとする
位置の内わけ
口のどこコマの数表3のどの行か
前6唇(/p/ /b/ /m/ /N/ /f/)、歯または歯茎(/t/ /s/ /c/ /ʃ/)、前母音(/i/ /e/)
中0舌先(/d/ /n/ /z/ /r/)
奥21軟口蓋(/k/)、奥舌(/g/)、声門(/h/)、後母音(/a/ /o/ /u/)
—(置けません)0いまは1つもありません

ぜんぶで 27 コマです (音素23個のうち、表3の注のとおり2コマに開くのは半母音 /j/ /w/ だけなので、音素の数と合わないことがあります。 促音 /Q/ は「次に続く音素と同じ位置」なので1コマのままです)。

1拍のなかで、口が行って帰っているところ

往復している拍は 4 拍です。3拍目「きょ」=奥 → 前 → 奥/7拍目「きょ」=奥 → 前 → 奥/8拍目「きょ」=奥 → 前 → 奥/10拍目「きょ」=奥 → 前 → 奥。

似ている隣どうし

子音か母音がそろっている隣は 8 組です。1拍目と2拍目(同じ母音 /o/)/2拍目と3拍目(同じ母音 /o/)/3拍目と4拍目(同じ母音 /o/)/4拍目と5拍目(同じ母音 /o/)/7拍目と8拍目(同じ子音 /k/・同じ母音 /o/)/8拍目と9拍目(同じ子音 /k/)/9拍目と10拍目(同じ子音 /k/)/10拍目と11拍目(同じ子音 /k/)。そろっている数が多いほど言いにくい、ということにはなりません (下の読み物にその実験の結果があります)。

割合
拗音の拍「きゃ・きゅ・きょ」など ÷ 拍ぜんぶ
4/11拍 → 36.4%
後母音/a/ /o/ /u/ ÷ 母音ぜんぶ
10/10個 → 100%
有声の音素のどが震える音 ÷ 数えた音素
14/22個 → 63.6%

有声か無声かの数え方は、この道具が決めたものです (論文の表4は、鼻・流・母音・半母音・促音の行を空欄にしています)。 決めたことの全文は、下の「この道具が読めないもの、決めたこと」にあります。

やってみる

1問目 / 全6問

7つの早口言葉を110人が5段階で評価したとき、いちばん「言いやすい」と出たのはどれ?

よくある質問

早口言葉の「拍(はく)」って何ですか

日本語を話すときの長さの単位です。国立国語研究所 ことば研究館は「拍とは、日本語を発音するときの長さの単位で、私たちが一つの仮名(あ/い/う/え/お/か/き/く/け/こ/…/きゃ/きゅ/きょ/…)を発音するときの長さが1拍です」と説明しています。ポイントは3つ。①「きょ」は2字でも1拍。②小さい「っ」も1拍。③「ん」も1拍。だから「とうきょうとっきょきょかきょく」は字で数えると15字ですが、拍で数えると11拍になります。この道具は字ではなく拍で数えていて、字の数と拍の数を両方出します。

いちばん難しい早口言葉はどれですか

「いちばん」を決めた資料は見つかりませんでした。ただ、7つを大学生・大学院生110名に5段階で評価してもらった記録があります。鈴木誠史・臼杵秀範・島村徹也(1995)「日本語早口言葉の構造と性質」の表1で、高い順に 東京特許許可局 3.62/青巻紙赤巻紙黄巻紙 3.36/新春シャンソンショウ 3.22/バスガス爆発 2.95/隣の客はよく柿食う客だ 1.86/坊主が屏風に坊主を上手に書いた 1.82/生麦生米生卵 1.73 でした。5は「何回練習し、ゆっくり発声しても間違う」、1は「最初から間違わないで発声できる」です。これは1995年の予備実験の値で、7つを比べただけのもの。世の中の早口言葉を順位づけたものではありません。

「生麦生米生卵」が難しくないって本当ですか

上の表1では7つのうちいちばん低い1.73、つまりいちばん言いやすいと評価されています。論文はその理由を「有声音のみで構成」と書いています。有声音とは、のどを震わせて出す音のことです。ただし論文自身の表4に当てはめて数え直すと、「なまたまご」の「た」の /t/ は無声破裂音でした。26音素のうち25が有声で、1つだけ無声です。「有声音だけ」ではなく「ほとんど有声音」と言うのが正確です。この道具は、あなたが入れた文についても有声の音素の数を分母と分子で出します。

どうして難しさの点数を出してくれないのですか

出せる根拠がないからです。もし「似ている隣の数」で点をつけると、似ている隣がいちばん多い生麦生米生卵がいちばん難しいことになりますが、実際に測った結果では7つのなかでいちばん言いやすいと出ています。もし「口の使う場所が変わる回数」で点をつけると、東京特許許可局は同じ「きょ」を4回くり返すので変化が少なく、簡単なほうに出てしまいます。どちらの数え方でも、測られた順番と合いません。数えるだけで難しさが決まらないと分かっているのに点数を出すのは、間違いを教えることになります。だからこの道具は「ここが往復している」「ここが似ている」と指さすだけにしています。

漢字を入れたらどうなりますか

変換せずに、その漢字を1字ずつ指して「読みをひらがなで入れてね」と出します。理由は、漢字から読みを当てるには辞書(形態素解析器)が必要で、このサイトは全ページをサーバー無しで配っているため積めないからです。読みを機械が当て違えると、あなたに間違った口の動きを教えることになります。同じ理由で、このサイトのローマ字の道具も漢字はそのまま残します。このページは、何が読めなかったかを必ず画面に出します。なお、ひらがなで打つこと自体が音を1つずつ意識させるので、早口言葉を見るには都合がよかったりします。

「東京特許許可局」はなぜ言いにくいのですか

1拍のなかで口が往復しているからです。「きょ」を音素に割ると k(軟口蓋=口の奥)→ j(表3の注のとおり /i/ の位置から後ろの母音へ動く)→ o(後母音=奥)で、奥から前へ行って、また奥へ帰ってきます。論文はこう書いています ──「/kj/の場合は、通常使われる音素ではあるが、音節としてみると、調音位置が1音節の間に、“後-前-後”と変化する。前後の音節にもよるが、運動量の多い調音といえよう」。「とうきょうとっきょきょかきょく」は11拍のうち4拍(36.4パーセント)がこの「きょ」なので、11拍のあいだに往復を4回することになります。同じ拗音でも「しゃ」は前から始まるので往復にならず、この道具では光りません。

早口言葉は誰が作ったのですか

ひとりの作者はいません。ただ、元祖といわれるものなら分かります。歌舞伎の「外郎売(ういろううり)」です。日本芸術文化振興会の文化デジタルライブラリー 歌舞伎事典によると、享保3年(1718年)に2代目市川團十郎が初めて演じました。外郎は「中国から渡ってきて小田原で売り出された、のどに効き、頭がすっきりして、口の動きがよくなる薬と言われています」と説明されていて、外郎売はそれを売り歩く商人です。2代目團十郎は、その宣伝のせりふをとても長い早口言葉にして人気を得ました。薬の宣伝が芸になり、300年たったいまも歌舞伎十八番のひとつとして残っているわけです。「俳優やアナウンサーの練習の定番」といった話は、開けた資料に書かれていなかったので書いていません。せりふそのものも、著作権の切れた版の公開スキャンに届かなかったので、このページには載せていません。

言い間違いは、前の音と後ろの音のどちらにつられますか

どちらもです。論文の表15は 前にあらわれる方が近い 34/後にあらわれる方が近い 39.3/前後同じ距離 14.8/あらわれない 11.9(合計100)と数えていて、論文自身の言い方は「誤る音素が前後どちらに現れるかは、ほぼ5分5分と言える」です。本文にも「『前に発声した音素の影響で言い誤る』場合、『次に発声する音素を先行して言い誤る』ことが同程度である」とあります。まだ言っていない先の音に、いま言おうとしている音が壊されることがある、ということです。距離も近くて、表16では2音素の距離が45パーセントでいちばん多くなっています。だからこの道具は、隣の拍を前と後ろの両方向で見ています。この表15と表16は、10名(254文を3回ずつ)の調べです。表1の110名とは別の実験なので、人数もいっしょに覚えておいてください。

この道具は声を録音しますか

しません。マイクは一切使わず、音声認識も判定もしません。あなたが打った文字だけを、この画面の中で計算しています。文字がどこかに送られることもありません。だから「うまく言えたかどうか」は判定できません。この道具ができるのは、文を見て「口のここを使っている」「ここが似ている」と地図のように指すことだけです。うまく言えたかどうかは、自分の耳と、まわりの人に聞いてもらってください。

早口言葉をひらがなで入れると、拍(はく)ごとに口のどこを使っているかを 前・中・奥で並べます。似ている隣どうしも文字で指します。難しさの点数は出しません。数えるだけでは難しさの順番にならないことが、110人に評価してもらった実験で 分かっているからです。

早口言葉は、1拍ずつ口の使う場所が変わっている

日本語を話すときの長さの単位を拍(はく/モーラ)といいます。 国立国語研究所 ことば研究館は「拍とは、日本語を発音するときの長さの単位で、私たちが一つの仮名(あ/い/う/え/お/か/き/く/け/こ/…/きゃ/きゅ/きょ/…)を発音するときの長さが1拍です」と書いています。 だから「きょ」は 2字でも1拍、「っ」も「ん」も1拍です。

そして1拍のなかでも、口のどこで空気をせき止めるかは音ごとに変わります。鈴木誠史・臼杵秀範・島村徹也(1995)は、この位置(調音位置)を大きく3つ ── 前・中・後 ── にまとめました。この道具はその表3をそのまま使っていて、 全部で21音素が並んでいます。

口のどこ表3の行帯に出す短い名前音素
前唇唇/p/ /b/ /m/ /N/ /f/
前歯または歯茎歯/t/ /s/ /c/ /ʃ/
前前母音前母/i/ /e/
中舌先舌/d/ /n/ /z/ /r/
奥軟口蓋軟/k/
奥奥舌奥舌/g/
奥声門声門/h/
奥後母音後母/a/ /o/ /u/

この分け方は、「くちびる/舌の先/のどの奥」と言いたくなる分け方とは少しずれています。 たとえば「た」の /t/ は舌先ではなく前、「な」の /n/ は中に入ります。 分け方を自分で決めず論文の表に合わせているのは、 そのほうがあとから確かめられるからです。 論文は「前・中・後」と書いていますが、この道具は子どもにも分かるように 「後」を「奥」と言い換えました。中身は同じで、言い換えたことも画面に出しています。 表のいちばん右から2つ目の「短い名前」は、歯・後母・軟・前母の4つだけが論文の表5に印刷されているもので、 残りはこの道具が付けた名前です(表5は「東京特許許可」の1語しか割っていないので、 そこに出てこない位置の略号は論文のどこにも印刷されていません)。

⭐ この題は、国立国語研究所 ことば研究館の「早口言葉はなぜ難しいのですか」(新しいタブで開きます)(川端良子)が先に書いています。拗音やマ行・パ行・バ行が多いこと、 入れ替えが共通母音か共通子音をもつ拍のあいだで起こることは、あちらが詳しいので 先に読んでもかまいません。この道具の持ち分は次の4つです ──「自分で打った文を、拍ごとに割って口の位置を出す」、「論文の表3(調音位置)と表4(調音様式)を、原文どおり日本語で出す」、「測られた評価値と、そこから出る「数えても難しさは決まらない」を並べる」、「論文に印刷された値と、括弧の分数から出る値の食い違いを両方出す」。

「きょ」は、1拍のあいだに口の奥→前→奥と往復している

東京特許許可局がなぜ言いにくいのか、論文ははっきり書いています。

/kj/の場合は、通常使われる音素ではあるが、音節としてみると、調音位置が1音節の間に、“後-前-後”と変化する。前後の音節にもよるが、運動量の多い調音といえよう

「きょ」を音素に割ると k(軟口蓋=奥)→ j(表3の注のとおり /i/ の位置から 後ろの母音へ動く)→ o(後母音=奥)。 つまり奥で止めて、いったん前へ来て、また奥へ帰る。 1拍のなかで往復しているのです。「とうきょうとっきょきょかきょく」は11拍のうち 「きょ」が4拍、36.4パーセント。 往復を11拍のあいだに4回やることになります。

論文は p.136 の表5 に「東京特許許可」を割った答えを印刷しています。

とうきょうとっきょきょか → /t o o k j o o t o Q k j o k j o k a/

音素18個、調音位置は21コマ。 ⭐ この道具が同じ言葉を割った結果は、並び順まで論文の表5と1つも違いません(単体テストが全数で突き合わせています)。 音素より コマのほうが多いのは、表3の注が 「半母音は位置が移動する」と決めているからで、半母音1つが2コマに開きます。 同じ拗音でも「しゃ」は ʃ(前)→ j → a(奥)で往復にならないので、この道具は拗音だからではなく、位置を並べて往復になるものだけを指します。

言い間違いは、これから言う音にも引っぱられる

ふつうは「さっき言った音につられて間違える」と思います。ところが論文が実験で 数えた結果は違いました。表15 はこうです。

どれくらいの人数の話かを先に書いておきます。表15と表16は、「べろだす」と「言葉遊び辞典」から選んだ254文を、東京方言を話す学生10名(男子9名・女子1名)が3回ずつ声に出して、どこで言い誤ったか・言いよどんだかを答えてもらった結果です。表1の110名とは別の、10名の調べです。

原因の音素はどこにあったか割合
前にあらわれる方が近い34%
後にあらわれる方が近い39.3%
前後同じ距離14.8%
あらわれない11.9%
合計100%

前にあらわれる方が近いが34パーセント、後にあらわれる方が近いが39.3パーセント。ここで「後ろのほうが多い」と言い切らないでください。 論文自身の言い方は「誤る音素が前後どちらに現れるかは、ほぼ5分5分と言える」で、本文にも「『前に発声した音素の影響で言い誤る』場合、『次に発声する音素を先行して言い誤る』ことが同程度である」とあります。まだ言っていない先の音が、いま言おうとしている音を壊すことがある、という話です。

しかもその距離は近くて、表16 では2音素の距離が45パーセントでいちばん多く、合計は99.9(丸めのぶん100になりません)。 だからこの道具は、隣の拍を前と後ろの両方向で見ています。片側だけ見ると、 実際に起きていることの半分を見落とします。

早口言葉を集めた本には、拗音が新聞の3倍 ── ただし本による

「早口言葉には『きゃ・きゅ・きょ』が多い気がする」は、本当でしょうか。 論文は3つの資料で音の出方を数えています。

資料中身文の数音素の数拗音の出現率
言葉遊び辞典辞典の「舌もじり、早ことば」の一部(鈴木棠三・東京堂出版・1981年)151文21,314音素2.8%
べろだす早口言葉集から引用(ニッポン放送編・ニッポン放送出版・1988年)208文4,370音素7.3%
社説新聞の社説3日分161文15,113音素2.3%

べろだすは社説の3.17倍です。 ただし、 同じ早口言葉集でも言葉遊び辞典は2.8パーセントで、社説の1.22倍しかありません。論文が「顕著なことは、「べろだす」における拗音の出現率が多いことである」と 書いているのもべろだすについてだけです。 だから「早口言葉ならどれも拗音が3倍」とは言えません。 そのうえで、拗音の母音(ゃ・ゅ・ょ)は、表3 の後母音の行に並ぶ /a/ /o/ /u/ しかありません。 奥で作る母音です。だから拗音が多い文では前で止めて奥で開くを速くくり返すことになります。ただしこれは拗音が多い文についての話で、早口言葉ぜんぶの説明ではありません。 この道具が拗音の割合を出すのは、この3つの数字と自分の文を 並べて比べられるようにするためです。

数えても「難しさ」は出ません ── 生麦生米生卵は、いちばん言いやすいと測られている

ここがこのページでいちばん大事なところです。論文は大学生・大学院生110名に 7つの早口言葉を5段階で評価してもらいました。

早口言葉読み評価
東京特許許可局とうきょうとっきょきょかきょく3.62
青巻紙赤巻紙黄巻紙あおまきがみあかまきがみきまきがみ3.36
新春シャンソンショウしんしゅんしゃんそんしょう3.22
バスガス爆発ばすがすばくはつ2.95
隣の客はよく柿食う客だとなりのきゃくわよくかきくうきゃくだ1.86
坊主が屏風に坊主を上手に書いたぼうずがびょうぶにぼうずおじょうずにかいた1.82
生麦生米生卵なまむぎなまごめなまたまご1.73
  • 5 ── 何回練習し、ゆっくり発声しても間違う
  • 4 ── 急いで発声すると間違う
  • 3 ── 少し練習すると、間違わないで発声できる
  • 2 ── 練習しないと、ときどき間違うことがある
  • 1 ── 最初から間違わないで発声できる

誰もが「難しい」と思っている生麦生米生卵が、7つのなかでいちばん言いやすい1.73と測られていました。似ている隣(な・ま のくり返し)はいちばん多いのに、です。 論文が挙げる理由は「有声音のみで構成」。 ただし論文自身の表4に当てはめて数え直すと、「なまたまご」の「た」の /t/ だけは 無声破裂音で、26音素のうち25が有声、1つは無声でした。ほぼ有声音でできている、と読むのが正確です。

表4の行行の名前に書いてある有声・無声音素
有声破裂有声/b/ /d/ /g/
有声摩擦有声/z/
鼻書いてありません/m/ /n/ /N/
流書いてありません/r/
無声破裂無声/p/ /t/ /k/
無声摩擦無声/s/ /h/ /f/
無声破擦無声/c/ /ʃ/
母音書いてありません/i/ /e/ /a/ /o/ /u/
半母音書いてありません/ja/ /ju/ /jo/ /w/
促音書いてありません/Q/

いずれにせよ、似ている隣を数えても難しさの順番にはなりません。 だからこの道具は点数を出さず、「ここが往復」「ここが似ている」と指さすだけに しています。表4 が有声・無声を書いていない行があることも、 そのまま画面に出しています。書いていないぶんをこちらで決めたのなら、 決めたと言わなければ嘘になるからです。

アナウンサー282人が答えた、言いにくい音の並び ── 1位はラ行+ラ行

論文が引いている先行研究に、NHK放送文化研究所が昭和30年代にアナウンサー282人へ行った 「発声しにくい言葉」のアンケートがあります。 子音の並びごとに、アクセント辞典の 見出し語数(a)に対して、発音しにくいと挙げられた語の数(b)の比を出したものです。

並び論文に印刷された割合括弧の分数分数から計算した割合例
ラ行+ラ行77.5%138/17877.5%受け入れられない
サ行+シャ・シュ・ショ57.7%45/7857.7%致死症
シャ・シュ・ショ+サ行57.4%54/9457.4%取水
ナ行+ダ行55.7%68/12853.1%〜の場などで
シャ・シュ・ショ+ツァ・チ・ツ・ツェ・ツォ35.7%印刷なし—初出
ナ行+ナ行33.88%58/17133.9%バナナなど
タ行+タ行29.9%67/22429.9%北高来郡
サ行+サ行29.4%138/47029.4%ひろし氏
カ行+カ行10.5%208/199010.5%取得価格

ラ行+ラ行はカ行+カ行の7.38倍です。 ただしナ行+ダ行だけは、印刷されている55.7パーセントと、括弧の分数から計算した53.1パーセントが合いません(差は2.6ポイント)。 この道具は数字を黙って直しません。 論文に印刷されている値と、分数から計算した値の両方を上の表に出しています。 どちらが正しいかは、論文を見ただけでは決められないからです。 もう1行、分数そのものが印刷されていない行があります。そこは計算のしようがないので 「印刷なし」「—」と書いてあります。0とは書きません。

早口言葉の元祖は、薬の宣伝だった

日本芸術文化振興会の文化デジタルライブラリー「歌舞伎事典」は、歌舞伎十八番のひとつ『外郎売(ういろううり)』について、享保3年(1718年)に 2代目市川團十郎が初めて演じたと書いています。

「外郎」とは何かというと、同事典の説明は「中国から渡ってきて小田原で売り出された、のどに効き、頭がすっきりして、 口の動きがよくなる薬と言われています」。 事典自身が「と言われています」と書いているので、ここも言い切りません。 そしてその薬を売り歩く商人が外郎売です。荒事の芸のひとつに 「長いせりふをよどみなくしゃべる」というものがあり、2代目團十郎は外郎売の宣伝の せりふをとても長い早口言葉にして人気を得た、と書かれています。

のどに効く薬を売る口上を、のどを使いきる早口言葉にした ── 宣伝が芸になったわけです。大正11年(1922年)に独立した作品として復活し、 昭和55年(1980年)には12代目團十郎が復活させました。享保3年(1718年)の初演から 300年あまり、いまも歌舞伎十八番のひとつとして残っています。 「俳優やアナウンサーの練習の定番になっている」とはここでは書きません。 開けた資料のどれにも、そうは書かれていなかったからです。

せりふそのものは、このページに載せていません。著作権の切れた版の公開スキャンに届かなかったからです(下の出どころに、 どこまで探して届かなかったかを書いています)。 また文化デジタルライブラリーは 「許可なく複製・改変することを固く禁じます」と明記しているので、丸写しはせず、 短い引用に出典を付けて要点だけ書いています。

この道具が読めないもの、決めたこと

読めないものを黙って読んだことにしないために、決めたことを全部書いておきます。 数の出どころだけでなく、数の出しかたを決めたのが誰かも、 あとから確かめられるようにするためです。

「奥」は、論文の「後」の言い換えです
論文は口の位置を前・中・後と書いています。この道具は子どもにも分かるように「奥」と言い換えました。中身は同じです。
「ん」は表3どおり前(唇)に置いています
実際の「ん」は、次に来る音につられて口の位置が変わります。この道具は論文の表3に合わせて前(唇)に固定しました。表に合わせたほうが、あとから確かめられるからです。
エ列+いは長音にしていません
「せい」のようなエ列+いは、内閣告示「現代仮名遣い」が長音に挙げていないので、この道具は /s e i/ のまま扱います。ただし論文は発声を写すため「音声」を /onsee/ と扱っています。
例文の読みは、発声どおりに手で書いたものです
論文は「文を発声に基づいたモーラと音素で表記する」と書いています。そこでこの道具の例文も、助詞の「は」を「わ」、「を」を「お」と読んだ形で持っています。読みは機械が当てたものではなく、手で書いたものです。
有声か無声かの数え方は、この道具が決めました
論文の表4が名前に「無声」と書いているのは、無声破裂・無声摩擦・無声破擦の3行だけです。この道具は、その3行の音素を無声、それ以外(有声破裂・有声摩擦・鼻・流・母音・半母音)を有声に数えています。促音は口をふさいで待つ時間なので、分母からも分子からも除いています。表4に書いていないぶんは、この道具が決めたことです。
拗音は表5の区分で数えています
論文の5.2は、あとの分析で拗音を「拗音」という別の分類にしています。この道具が使っているのは、表5と同じ「子音+半母音+母音」の区分のほうです。
難しさの点数は出しません
似ている隣がいちばん多い生麦生米生卵が、110人に測ってもらった評価ではいちばん言いやすい1.73でした。数えるだけでは難しさの順番にならないと分かっているので、この道具は指さすだけにしています。
マイクは使いません
録音も、声の判定もしません。打った文字だけを、この画面の中で計算しています。うまく言えたかどうかは判定できません。
「ぢ」「づ」は「じ」「ず」と同じ音として読みます
いまの発音が同じなので、同じ音素にしました。これもこの道具が決めたことです。

もうひとつ、論文自身の音素の書き方がそろっていないところが 2件あります。「し」を s・sh・ʃ の3通りで書いていて、この道具は ʃ に統一しました。 統一したこと自体を、ここに書いておきます。

語読み論文の表記この道具の表記どこが違うか
手術しゅじゅつsjuzjucuʃjuzjucu「し」を s と書いています(ほかの箇所では ʃ)。
7時しちじshiciziʃicizi「し」を sh と書いています(ほかの箇所では ʃ)。

そして、開けなかった資料・使わないと決めた資料も書いておきます。 開けたふりをすると、次に読む人が確かめようがなくなります。

外郎売の口上(台詞)そのもの
著作権の切れた版の公開スキャンに届きませんでした。国立国会図書館サーチの書誌47件は開けましたが本文に届かず、次世代デジタルライブラリーの全文検索は中身の代わりに画面の入れ物だけを返しました。だから台詞はこのページに載せていません。
国際音声記号(IPA)の表
公式ページは開けましたが、利用の条件が「同じ条件で配ること」を求めるものでした。このサイトの決まりに合わないので、表も図も記号一覧も載せていません。口の位置の分け方は、論文の表3を自分で書き起こして使っています。
国立国語研究所報告100『日本語の母音,子音,音節』の本文
書誌のページは開けましたが、本文のPDF(13.8メガバイト)は取っていません。だからこのページは、そこから数字を1つも引いていません。

出どころ: 鈴木誠史・臼杵秀範・島村徹也(1995)「日本語早口言葉の構造と性質」放送教育開発センター研究紀要 第12号 pp.131-149(新しいタブで開きます)(表1・表2・表3・表4・表5・表15・表16と、NHKのアンケート、資料の規模、拗音の出現率。PDFは画像なので、ページを画像にして目で読み写しました。) 内閣告示「現代仮名遣い」本文 第1(文化庁)(新しいタブで開きます)(拍の切り方(直音・拗音・撥音・促音・長音)と、長音の5通り。エ列+いが長音に挙げられていないことも原文で確かめました。) 国立国語研究所 ことば研究館「早口言葉はなぜ難しいのですか」(川端良子)(新しいタブで開きます)(拍の定義と、早口言葉に拗音やマ行・パ行・バ行が多いこと。この題ではこちらが先に書いています。) 日本芸術文化振興会 文化デジタルライブラリー 歌舞伎事典「外郎売」(新しいタブで開きます)(享保3年(1718年)に2代目市川團十郎が初演したこと、外郎が薬であること。丸写しはしていません。) 確かめられなかったこと ── 【外郎売の口上(台詞)そのもの】著作権の切れた版の公開スキャンに届きませんでした。国立国会図書館サーチの書誌47件は開けましたが本文に届かず、次世代デジタルライブラリーの全文検索は中身の代わりに画面の入れ物だけを返しました。だから台詞はこのページに載せていません。 【国際音声記号(IPA)の表】公式ページは開けましたが、利用の条件が「同じ条件で配ること」を求めるものでした。このサイトの決まりに合わないので、表も図も記号一覧も載せていません。口の位置の分け方は、論文の表3を自分で書き起こして使っています。 【国立国語研究所報告100『日本語の母音,子音,音節』の本文】書誌のページは開けましたが、本文のPDF(13.8メガバイト)は取っていません。だからこのページは、そこから数字を1つも引いていません。 論文のPDFは画像スキャンで文字の層がありません。 表の数字はページを画像に焼いて目で読み写したもので、機械で抜き出したものでは ありません。評価値は1995年・110名の予備実験の値、表15と表16は同じ論文の別の実験(10名・254文)の値、NHKのアンケートは 昭和30年代のものです。いまの言葉づかいとは違う可能性があります。 ⭐ あなたの文について画面に出る数(拍・音素・コマ・割合)は、 このページがその場で数えたもので、よそから写した数字は1つもありません。

近い道具との違い ── 音節を数えるは英語の音節の数え方で、日本語の拍との違いを見る道具です。ローマ字変換はつづりを変える道具で、 こちらと同じ理由で漢字は読めません。 このページが見るのは、つづりでも字数でもなく口のどこを使うかだけです。