調べて分かる道具箱

日本測地系と世界測地系のずれ

まず、450メートルがどれくらいかを見る

矢印の根もとが古い地図での場所、矢印の先がいまの地図での同じ場所です。下にある物差しは陸上競技場のトラック1周ぶん(400メートル)で、 矢印と同じ縮尺で描いてあります。 矢印を物差しに当ててみてください ── どれもトラック1周とだいたい同じ長さです。

日本測地系から世界測地系へ、座標が動く向きと大きさ稚内 388m東京 463m宮古島 416m石垣島 609mもとの位置400m(トラック1周)
上が北、右が東です。物差しの目盛りは100メートルごと。石垣島の矢印だけ、右上(北東)を向いているのが分かります。 ここがこのページのいちばん面白いところで、あとで理由を説明します。
測地系とは
緯度・経度を決めるには、まず「地球はこういう形の楕円体だ」と決めて、その上に線を引く必要があります。 この「決めごとのまとまり」を測地系(そくちけい)といいます。

やってみる

1問目 / 全3問

日本測地系の座標を世界測地系に直すと、東京付近ではどちらへどれくらい動きますか?

よくある質問

世界測地系と日本測地系のずれは、どれくらいですか?

東京付近で北西へ約450メートルです。国土地理院は「東京付近では、経度が約-12秒、緯度が約+12秒変化します」「これを距離に換算すると、北西方向へ約450mずれることに相当します」と書いています。日本各地25地点で実際に変換してみたところ、動く量はいちばん小さい稚内で388メートル、いちばん大きい石垣島で609メートルでした。同じ場所を指しているのに数字が違うだけで、土地が動いたわけではありません。

いつ世界測地系に変わったのですか?

平成14年(2002年)4月1日です。前の年に測量法が改正され、この日から世界測地系が使われるようになりました。新しい測量成果は「測地成果2000」と呼びます。その後、平成23年の東北地方太平洋沖地震による地殻変動を受けて測地成果2011に改定され、令和7年(2025年)4月1日には高さの成果を直した測地成果2024が公表されています。

「日本全国で数メートルのずれ」と書いてある解説を見ました。合っていますか?

ほとんどの場所では合っていますが、「全国で」の部分が合っていません。よく出回っている簡易式を25地点で試したところ、22地点では5メートル未満に収まりました。ところが那覇で14.9メートル、宮古島で72.5メートル、石垣島では233.0メートル外れました。沖縄の島を扱うときに、この文を信じてはいけません。

なぜ石垣島だけそんなに違うのですか?

昔の三角測量では、離れた島まで見通して角度を測ることができなかったからです。国土地理院の飛田幹男さんの論文は「一部の離島では、近隣の離島とかけ離れた値をとっている(例:石垣島)。三角測量で三角網を構築していた時代に、トランシットで視通のとれない離島は、独自の測地系とせざるを得なかったためである」と書いています。つまり石垣島の古い座標は、本土とは別のものさしで測られていました。

自分の持っている古い座標を、いまの座標に直せますか?

国土地理院の測量計算サイトにある「TKY2JGD」で変換できます。このページでは変換をしていません。正しく変換するには全国を約1キロメートルごとに区切った約38万点ぶんのパラメータが必要で、場所ごとに値が違うからです。簡単な式ひとつで全国をまかなうことはできません。

3つの数だけで座標を平行移動させる方法ではだめですか?

だめです。飛田(2001)は3パラメータや7パラメータの変換について「『測量器械,測量方法,計算方法に誤差がない』かつ『位置は移動しない』という前提があるため,日本測地系を構成する三角点や地図を世界測地系に移行する目的には適さない」と書いています。旧日本測地系のずれは測量そのものの誤差なので、地球ごと平行移動しても消えません。実際に25地点で試すと、簡易式より良くなりませんでした。

おじいさんの持っている古い地図の「北緯○度○分」と、いまのスマートフォンが出す 「北緯○度○分」は、同じ場所でも数字がちがいます。 東京のあたりで北西へ約450メートル。 なぜそうなったのかを、国土地理院の資料と、実際に測った結果から見ていきます。

測地系とは ── 同じ場所なのに数字がちがうのは、ものさしの当て方がちがうからです

地球は、でこぼこがあって完全な球ではありません。だから緯度・経度を決めるには、まず「地球はこういう形の楕円体だ」と決めて、その上に線を引く必要があります。 この「決めごとのまとまり」を測地系(そくちけい)といいます。

明治の日本が選んだのはベッセル楕円体でした。そして東京の1点(日本経緯度原点)の経度・緯度を星の観測で決め、 そこから三角形をつないでいく三角測量で全国へ広げました。 これが日本測地系です。

いま使っているのは世界測地系で、人工衛星や超長基線電波干渉法(VLBI)(新しいタブで開きます)のように地球の外から測る方法で決めています。 地球の重心を原点にそろえてあるので、世界中の地図とかみ合います。

出発点も、楕円体も、測り方も違うのですから、同じ場所の数字がずれるのは当たり前です。 国土地理院はその量を、こう書いています。

東京付近では、経度が約-12秒、緯度が約+12秒変化します。 これを距離に換算すると、北西方向へ約450mずれることに相当します。

1秒は1度の3600分の1です。実際にこのページで測った東京の地点でも、緯度は+11.6秒、経度は-11.6秒、距離にして463メートルでした。

切り替わった日と、そのあとの改定

明治時代
ベッセル楕円体の上で、東京の1点(日本経緯度原点)を星の観測で決めて、そこから三角測量で日本じゅうへ広げた。これが日本測地系。
平成14年4月1日
改正した測量法が施行され、世界測地系に切り替わった。新しい成果が測地成果2000。
平成23年(2011年)
東北地方太平洋沖地震で地面が動いたため、測地成果2011へ改定。日本経緯度原点が東に約27センチ動き、日本水準原点が2.4センチ沈下した。
令和7年4月1日
測地成果2024を公表。高さの基準を衛星測位でそろえ直した。

面白いのは平成23年の改定です。地震で日本列島そのものが動いたので、測った数字ではなく、基準の側を書き直したわけです。 国土地理院によれば、日本経緯度原点は東に約27センチ動き、日本水準原点は2.4センチ沈下しました。 2つの原点の数値が同時に改正されたのは、これが初めてでした。

⭐「日本全国で数メートル」と書いてある解説を、そのまま信じてはいけません

測地系の解説には、よく「簡単な式で直せます」という一次式が出てきます。 本当に使えるのか、日本各地25地点で試しました。 正解は国土地理院の変換(TKY2JGD)に出してもらい、 その答えから何メートル外れるかを測っています。

結果は半分当たりで、半分はずれでした。25地点のうち22地点では5メートル未満に収まっています。 ところが残りの3地点 ── 那覇で14.9メートル、宮古島で72.5メートル、石垣島では233.0メートルも外れました。 まちがっているのは「全国で」の3文字です。

簡易式が国土地理院の答えから外れた距離(同じ縮尺)0m100m200m大阪0.5m東京2.5m那覇14.9m宮古島72.5m石垣島233.0m
棒の長さは、ずれたメートル数をそのまま縮尺どおりに描いています (短い棒を見やすく伸ばしたりしていません)。大阪や東京の棒は、この縮尺だと線1本ぶんも無いので、 数字を横に添えてあります。

石垣島だけ、動く向きまでちがいます

測った25地点のうち、24地点は北西へ動きました。 ところが石垣島だけは北東へ── 東へ40メートル、北へ608メートル、 あわせて609メートル動きます。 上の図で1本だけ右を向いている矢印が、これです。

理由は、国土地理院が出している論文にはっきり書いてあります。 TKY2JGD を作った飛田幹男さんの「世界測地系移行のための座標変換ソフトウェア“TKY2JGD”」(新しいタブで開きます)(国土地理院時報 第97集)です。

一部の離島では,近隣の離島とかけ離れた値をとっている(例:石垣島)。 三角測量で三角網を構築していた時代に,トランシットで視通のとれない離島は, 独自の測地系とせざるを得なかったためである。技術的な問題でものさしが正確にあてられなかったのだ。

望遠鏡でのぞけない島は、三角形をつなげません。だから遠い島は、本土とつながっていない別のものさしで測るしかなかった ── そのずれが、そのまま残っていたわけです。 同じ論文は、旧日本測地系の成果には「北海道で約9m,山陰地方で約5m,九州で約4mの誤差がある」、そして「離島によっては,200mを超える座標値の修正が必要になっていた」とも書いています。 このページで石垣島に出た233.0メートルは、その200mを超える、という話そのものです。

「ちゃんとした変換」に見えるほうが、かえって当たりません

簡易式のかわりに、地球ごと平行移動させる方法(3パラメータ変換)もあります。 座標を x・y・z の3方向へずらすだけの、見た目のすっきりした計算です。 飛田(2001)はその移動量を−146.414メートル・+507.337メートル・+680.507メートルと載せています。

同じ25地点で試すと、簡易式より良くはなりませんでした。

簡易式と3パラメータ変換が、国土地理院の答えから外れた距離
やり方中央値いちばん外れた所
よく出回る簡易式2.5m233.0m石垣島
3パラメータ変換3.3m250.2m石垣島

これも同じ論文が理由を書いています。3パラメータや7パラメータの変換には「測量器械,測量方法,計算方法に誤差がない」かつ「位置は移動しない」という前提があるので、「日本測地系を構成する三角点や地図を世界測地系に移行する目的には適さない」。

旧日本測地系のずれは、測量そのものの誤差でできています。誤差は場所ごとにばらばらなので、地球全体をどうまとめて動かしても消えません。 だから国土地理院は、全国を緯度30秒・経度45秒(およそ1キロメートル)ごとに区切り、約38万点の格子ひとつひとつに違う補正量を持たせるという力ずくの方法をとりました。 離島だけで58地域・13,552点あります。1つの式で全国をまかなうのは、はじめから無理だったわけです。

25地点で測った結果(全部)

地点は「そのあたり」という程度の座標で、三角点でも役所の位置でもありません。 ずれ方の傾向を見るためのものです。

日本各地25地点で、日本測地系から世界測地系へ動く量と、2つのやり方のずれ
地点向き動く距離簡易式のずれ3パラメータのずれ
稚内北西387.7m4.3m7.6m
札幌北西405.0m2.3m5.1m
釧路北西429.5m3.8m5.6m
青森北西420.0m2.6m2.9m
秋田北西425.5m2.4m2.4m
仙台北西445.8m1.0m1.1m
新潟北西435.2m1.8m1.6m
佐渡・相川北西427.6m3.3m2.4m
長野北西441.8m0.8m1.5m
金沢北西430.3m3.8m3.6m
東京北西462.7m2.5m0.2m
名古屋北西447.8m0.8m1.4m
京都北西441.7m0.8m2.7m
大阪北西443.4m0.5m2.1m
松江北西420.1m2.9m4.1m
広島北西427.8m2.2m4.5m
高松北西437.9m0.6m3.1m
高知北西444.7m2.5m4.1m
福岡北西424.2m0.6m3.3m
対馬・厳原北西411.8m1.2m3.6m
鹿児島北西442.8m2.7m2.6m
屋久島北西454.0m4.2m4.3m
那覇北西472.4m14.9m14.7m
宮古島北西416.1m72.5m88.2m
石垣島北東609.1m233.0m250.2m

左に帯の付いている3行が、簡易式のずれが5メートル以上だったところです。 動く距離そのものは、いちばん小さい388メートルから いちばん大きい609メートルまで、25地点すべてが400メートル前後に集まっています。動く量ではなく、ずれ方の違いが問題だということです。

自分で確かめるには

国土地理院の測量計算サイトで、誰でも同じことができます。 このページの数字も、そこから出してもらったものです。

  1. 国土地理院「Web版TKY2JGD」(新しいタブで開きます)を開く
  2. 「日本測地系 → 世界測地系」を選び、緯度・経度を度で入れる(例: 35.69 と 139.69)
  3. 出てきた数から、もとの数を引く。緯度が増えていれば北へ、経度が減っていれば西へ動いたことになる
  4. 石垣島のあたり(24.34 と 124.16)でも同じことをすると、経度が増えるのが確かめられる

変換はこのページではできません。正しく変換するには約38万点ぶんの補正量が必要で、静的なページには載せられないからです。 国土地理院の変換には「10秒間で3回」という利用の制限もあります。本当に変換したいときは、上の測量計算サイトを使ってください。海の上の点は変換できないので(試したときも「指定された座標は海域のため、変換できませんでした」と 返ってきました)、その場合は海上保安庁海洋情報部の変換を使います。

出典と加工について: 測地系の説明・ずれの量・切り替わった日・ 原点数値の改正は出典:国土地理院ウェブサイト(日本測地系と世界測地系)(新しいタブで開きます)、同(測地成果2000、測地成果2011及び測地成果2024)(新しいタブで開きます)、同(日本の測地系)(新しいタブで開きます)から。石垣島と離島についての引用・変換パラメータの作り方・3パラメータの数値は、飛田幹男(2001) 「世界測地系移行のための座標変換ソフトウェア“TKY2JGD”」(国土地理院時報 第97集 31-57ページ)から。 25地点の表は加工したものです。同(測量計算サイトのAPI)(新しいタブで開きます)に2026年8月15日に問い合わせた変換結果を正解として、こちらで簡易式・3パラメータ変換との差を メートルに直して並べたもので、国土地理院が公表している表ではありません。 国土地理院のコンテンツは公共データ利用規約(PDL1.0)に従って利用しています。 トラック1周の400メートルは日本陸上競技連盟 競技規則 TR14(新しいタブで開きます)(「標準的なトラックの長さは400mとする」・計測は縁石の外端から300ミリメートル外方)から。